診療ではどんなやりとりをしているの?

(#2 診療中によく聞かれる質問への回答を週末に1つずつアップします。診療も楽に、みなさんも楽になりますように。)

私は診察は対話、もっといえば共同作業のセッションだと思っています。

来談者の問いや体験をお聞きし、こちらのお考えをお伝えし、いったりきたりしつつ気づきと癒やしをえてともに成長できればと思います。

来談者が話題にしたいことがあればそこから出発します。

ただ特に自閉スペクトラム症の方は、困っていることはないか?と聞いても、困っていてもそれ自体思いつかないこともあります。

あるいは毎回、困っていることを聞いていると、困っていることを用意してこないといけないかとおもってしまう人もいるかもしれません。

うつの方は辛くて言葉にするどころではないかもしれません。
統合失調症の方は、思考や行動がまとまらず混乱しているかもしれません。
依存症の方は困っていても否認のために、困っている自分の状況を認められないこともあるかもしれません。



来談者の「大丈夫です。」という答えは少々不安になります。
それはその方自身が、どのようなことを困っているかというのがわからない、それを困っていると言っていいと思っていない場合もあるし、うまく表現できず我慢している場合もあるからです。

特に来談者からの表出がなければ、前回の診察からの生活の様子や、楽しめていることなどからお聞きし、嫌なこと、心配なこと、困っていることをお聞きする。それからやりたいことをお聞きすることもあります。

語りたくなければ語らないのも自由です。

こちらからも感情や行動の選択肢を示しながら気づかず型、我慢型のニーズを探っていきます。
とにかくしんどくいろいろな刺激から逃れて休みたい状況なのか、そこから回復してきて心の食欲が出てきて暇をかんじ、次の一歩の選択肢がほしいのか・・。

そのときどきの状況にあわせて環境をととのえていきます。

そしてそのときの状況にあわせて、それならやってみようと思える行動を1つずつくらい提案できればとおもっています。



お薬の処方も、こういう疾患や、こういう症状に、こういうことを期待できるこういう薬がある。
こういう人にこのように効くといわれていて、自分の経験ではこうである。
副作用としてはこういうことがこのくらいの割合でおこりうる。
その場合はこういう対処をする・・。
というようなことをお伝えした上で本人に納得の上選んでもらい、それを感じてもらい、丁度いい種類と量に調整していくような感じです。

行動の処方も同じような感じです。こんなことをやってみたら・・。という感じで提案していきます。

その際に医学的なエビデンス(現在言われていること、研究結果、さまざまな臨床経験)を分かる形で可能な限りお伝えします。

ケースワークや社会的処方というのも積極的におこなっています。
こういう制度がある、支援機関がある、こういう人がいる、などと紹介してつないでいきます。

家族や支援者、その他、重要な他者との対話ができる状況をつくっていきます。

こういうことを繰り返していくうちに、主体が育ち、あるいは主体を取り戻し、社会のなかで自分なりに生きていけるようになり、診療の時間は世間話のようになってくるでしょう。

そうしたら、終診はちかいです。
こんな感じで治療が終結していけばよいのかなとおもっています。

そして、もしまたさまざまなライフイベントの中で、眠れない、相談する相手が思いうかばないような状況になれば、何人目かに思い出していただければいいかと。

(樋端 佑樹)

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