親のお金を持っていってしまうのをどうすれば?

(#1 診療中によく聞かれる質問への回答を週1ずつ残していきます。診療も楽に、みなさんも楽になりますように。)

知的・発達障害の方には年齢を問わず割と多い相談です。

親の財布から勝手に抜き出してしまう、親が何度厳しく叱ってもやまらない、警察にまで来てもらってもらってもやまらない。
そのうち家のものを売ってしまう、カードをつくって借金までしてしまうなどのことも聞きます。

よくよく聞くと、ソシャゲに課金をしていた、持ち出した親のお金を友達に配っていた、実は脅されていたなどのこともあります。


お金はモノの中で特別な位置をあたえられたものです。

貨幣それ自体は紙だったり金属だったり、データサーバー上の数字だったりするのですが、みんなが価値があると信じているために価値があるという特徴があります。
その特徴をもとに市場で様々なものに引き換えることのできる選択肢でもあります。
価値を提供することでお金を得て、自分が価値があると思うものに対してお金を介して自由に引き換えて使う楽しみを知るというのは重要なことです。

最近はキャッシュレス化がすすみ、数字になり、人によっては実感がわきづらくイメージしにくくなっていています。
気づかずにリボ払いなどで借金をさせられたり、不要なものを契約させられていたりというのは発達障害の人はコロリとやられやすいです。

そういった落とし穴はあるけれど、価値を全部見える形のお金に換算できるので、感情や人間関係などの見えないものに比べて明確なわかりやすさもあります。

しかし日常の現実に居場所がない、楽しみがなかったりすると、手段であるはずのお金をひたすら貯めることが目的になってしまう、刹那的な自由を享受する快感をもとめてお金を浪費するという依存症のようになってしまう恐れもあります。

さて、家族のお金をもっていってしまうという行動に関して考えてみましょう・・。

まず家族のお金との区別がついていない可能性があります。
家のものは全部自分のものだと誤学習している場合ですね。それより以前にお金以前に、本人ももの、活動(時間の使い方など)が尊重されている、自他の区別がついているかということもあります。

ASD(自閉スペクトラム症)があるとそのあたりの境目がわかりづらく、周りからきちんと自他の境界線を意識して尊重されるという関わりがつみかさらないと、境がわからず、他の人を尊重するということができません。周りから言われたようにではなく、周りの人からされたように振る舞います。

お金に関していえば、お小遣いがきちんと月ぎめなどで定額でわたされており、その使いみちには口をだされていないかどうかなども気になるところです。
その前提としてスケジュールやカレンダーがわかっているか、使えているかということも大事です。

できれば10代の10年くらいをかけて、自分の時間の使い方、欲望形成をしつつお小遣いを自分で管理してお金の意味や使い方を学んでいく必要があります。

あとは、わかっていても目の前にあると抑えられず盗ってしまう、わからなければいいだろうと思っている場合もあります。
これはADHDの衝動性のコントロールの問題もあります。
あるいは躁状態などテンションがあがりすぎたときに気が大きくなってそういった行動の問題がでてくることもあります。
このあたりは薬物の効果も期待できる部分かもしれません。

親がお金の管理にだらしなく、管理ができておらずそのあたりに置いているということろもあるかもしれません。大事なものは大事に扱うことが大事です。

この場合は親子でこの課題に取り組む必要があります。

もっとも政治家などでも自分のお金ではなく、皆から預かったお金を私物化してしまうなどがあるので、この問題は非常に根深いですね。

とりあえず今回はこんなところで・・・。
具体的には診察室などでご相談ください。

(2021年3月1日 樋端佑樹)

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