発達支援における警察の役割

一般的に社会的規範を逸脱する者に対しては、社会は①司法処遇(矯正)、②教育処遇(教化)、③医療処遇(治療)のいづれかで対応することになります。


統合失調症の幻覚妄想状態や躁状態などによる心神喪失の状態であれば、非自発的な精神科病棟への入院して治療することが必要かつ有効かもしれません。
しかしそれ以外では措置通報があったとしても、措置鑑定では精神疾患により自傷他害の恐れがあるという要措置との鑑定にはならないと思われます。
知的障害や発達障害の方の行動障害、逸脱行為の多くはこれにあたります。


多くのケースでは衝動性や過敏性を緩和する薬物は十分量つかわれており(これらのお薬もある量をこえて過剰になると周囲の都合での鎮静にしかならず、学びを阻害してしまいます。)あとは周囲の関わりで教化し、社会の中で生きていけるように仲間はずれにせず皆で育てていく必要があります。

知的障害や発達障害があっても、多くの方は弁別能力はあり分かるように丁寧に伝えれば道理や理屈は理解することはできます。
ただ生育環境の問題、誤学習しやすい本人の特性などから、未学習、誤学習も多く、成人というには、精神的な成熟、社会化が終わっていない方もいます。
本人が選択した行動に対してその結果(責任)を引き受けるという自己責任のサイクルを回していけるように周囲は振る舞うことが求められます。

特に社会の仕組みは法律(対話をもとにした合意)にのっとって動いている、ルールを守ることで、自分の維持したい暮らしが守られるということを伝えることが必要です。(課題と報酬の関係ですね)

前提として。以下のようなことがポイントになると考えられます。おめめどうの奥平綾子さんがおっしゃっていることですが・・。

1 周囲がさせたいことをやらせるだけではなく、本人の好む、好きなことをすることが十分に保証されている 
2 カレンダーや手帳、スケジュールなどを日常的に活用して、見通しのある暮らしをおくれている
3 選択肢が十分示され、自分のことは自分で選び、結果を見せられる暮らしがおくれている
4 暗黙のルールや、していいことや、してはいけないこと、その理由、結果について本人が分かる形でしっかり説明され、伝えられている  。
5 年齢相応に扱われ、性についても尊重されている(幼稚な扱いをされていない、思春期以降、親と一緒に寝ないなど)

まず本人の権利が尊重され、維持したい暮らしと楽しみな明日があることが大前提です。

それがないと、いわゆる無敵の人になってしまいます。無敵の人というのは、社会的に失うものを何も持たず、そのため凶悪な犯罪行為などにためらいなく及べるような人々を総称する言い方で、ネットスラングです。

失いたくない暮らしや大切な人などがあるからこそ、他者の権利を侵害するルールを守らないことで、それらが失われる罰金刑や懲役刑が初めて意味をなします。

警察の立ち直り支援など、生活安全課の中で育っているような子もいます。
しかし、このままでは犯罪者になってしまうと心配した家族が警察に相談に行っても、取り合ってもらえず「家族がちゃんとみなきゃ」とか、「そんな人は入院しか無い。」と言われることもあるようです。

警察に犯罪予防の観点からお願いしたいことは④の情報提供(叱責ではなく、見通しを示す)した上で、本人が分かっていて他者の権利を侵害したときに、周囲の通報に対応して、めんどくさがらず素早く対応していただく(③)ことです。それが本人の人権を尊重することになります。 
イメージする力が弱い方も多いので、実際の体験などが一番納得できます。



私が過去に関わった事例でも、女性衣類の窃盗など軽犯罪を繰り返す事例に対して、警察より情報提供(留置所の見学や逮捕→裁判の流れの説明)を行って、犯罪予防をおこなったケースがありました。
現在は立派に地域社会の一員として働き、立派に暮らしておられます。

発達障害者支援法においては、

・個人としての尊厳に相応しい日常生活・社会生活を営むことができるように発達障害の早期発見と発達支援を行い、支援が切れ目なく行われることに関する国及び地方公共団体の責務を明らかにする。
・発達障害者の自立及び社会参加のための生活全般にわたる支援を図り、障害の有無によって分け隔てられること無く(社会的障壁の除去) 、相互に人格と個性を尊重(意思決定の支援に配慮)しながら共生する社会の実現に資する。

とうたわれ、平成28年度の改正では関係機関間の協力部局の例示に【警察】も追加されております。
こういった法律があることを鑑み、警察にはなにとぞ地域での支援チームに加わっていただき、適切な対応をお願いしたいと思います。

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