はひふへほの精神療法とストレングストーク®

最近、かなり以前にみていた患者さんから元気でやっていて働き始めたという報告とともに「そうなんだー」と聞いてもらえたことが嬉しかったとお手紙をいただいたり、「センセが面白がって聞いてくれるのでこんな自分でもいいと思えた、頑張ろうと思える」と言われたこともありました。

ほー、なるほどー、そうなんだー。これは嬉しいですね。

はひふへほとさしすせそ

そういえば精神療法は「はひふへほ」が言えれば出来ると言ってたのは誰だっでしょうか。

おそらくは京都で多職種のチームで重度の精神障害者の暮らしを地域で支える支援をおこなっているACT-Kの高木俊介先生の講演だった気がします。

高木先生の話はPSWや看護師がイニシアチブを取って本人の願いにそった生活支援をおこない、医師は誰でも「はひふへほ」がいえる人をつれていけばいいというような話だったかなあ?

「はひふへほ」とは、はー、ひーっ、ふーん、へえ、ほぉと相づちを打ちながら、相手の話を興味と驚きをもって聞くということです。それ以外に「なるほど〜」「いいね」という返しが定番のセンパイ精神科ドクターもいましたね。

自分は好奇心強いのが強みで、本当にどんな人のどんな話でも興味もって聞けるので、日々「はひふへほ」と楽しくやっています。

似たようなのに「さしすせそ」精神療法というのもあって、「さすが、知らなかった、すごいね、センスあるね、そうなんだ」というらしいです。さしすせそは「合コンさしすせそ」といい、合コンでもてるための方法でもあるのでご活用ください。
まちがっても「さーせん、しらんがな、素でいってんの?、精一杯でそれ?それがどうした?」ではありません。

そういいえば、『ググる力』と『ほめる人』がいれば、子どもは勝手に勉強ができるようになるというインドの有名な実験があります。スラム街にネット環境とパソコンを置いただけで学力が30%向上、さらにほめる近所のおばさん役を加えた結果、学力は50%向上したそうです。

「Googleと、褒めてくれる人がいれば、子どもは誰でも勉強ができるようになる」 スガタ・ミトラ


はひふへほとさしすせそ、あとはオウム返しなどつつ、ちょっとだけ質問する感じで、相手の隠された強みを見つけて言及していきながら、ポジティブに動機づけを行い、相互作用になるように対話をすすめていきます。

「はひふへほ」、「さしすせそ」は子育てや職場などにも使えますね。
ぜひご活用を。
しかし上手に褒める(認める)ってなかなか難しいものです。

そこでストレングストーク®の活用


「隠された強み」といえばストレングストーク®。

これは人の強み(ストレングス)に気づき、ポジティブな視点で支援プランを検討し、子どもと大人のやりとりにおいて、ポジティブな相互作用を生み出しやすくする、さらには支援者自身のエンパワメントにも応用可能という素敵な手順、枠組みです。

ケースワーカーや精神科リハビリテーションでよく活用されるストレングスモデルを子どもにも適応できるようにと精神科医の井上祐紀先生(福島県立矢吹病院)が改良して開発し、ストレングストーク研究会でワークショップなどをやって広めています。


ストレングス・トーク®︎では、困難を抱えた子どもや大人を4つの“隠れた強み”から見立てることで、対話を促進します。

今回、そのミニワークショップ(オンライン)にやっと参加させていただきました。

ストレングスモデルにおいて、明白な強み(周囲から見ての明らかな長所)には目が行きやすいものですが、隠された強みにはなかなか目がいきません。

隠された強みとは

①本人への良い影響
②周囲への良い影響
③ねがいごと
④不器用な対処

の4つ。

これらを子どもの行動問題の背景などに見出していくことで、今ここの世界とのつながり(マインドフルネス)を、そして未来とのつながり(希望)を持つことができます。
もちろん大人や自分自身に対しても使えますよ。

しかし、子どもの隠された強みが見つけられるようになるには、大人も守られている感じられること、そして自分自身の強みに気づくこと、そして身近な人の強みに気づいていくことが大事です。パートナーや子どもなどの家族や支援している対象者など関係が近すぎる人に関しては最期に強みを探すのがいいそうです。

ワークショップではワークや参加者がグループに別れて枠組みに沿ってそれぞれの強みを見出す対話をおこないました。

子どもの臨床においては、能力のアセスメントとその改善、療育、トレーニングなどに終始しやすく、子どもの行動問題に対して子どもの体験やわけも聞かず、叱責したり、内省をせまったりしがちですが、ストレングストークを活用することでそういうことがなくなっていきますよ。

ストレングストーク研究会で、ワークショップが行われているようですので、機会があればぜひ参加していただければと思います。

症状や問題を外在化しアクションプランを一緒に考える


私の診療においては、これらを活用しつつの雑談9割、相談1割でお話をしています。傍目からは楽しく雑談しているようにしか見えないかもしれません。いや実際に楽しく雑談しているんです。

そして体験などをじわじわと徐々に語れるようになったら、本来の自分を妨げている症状や問題を外在化し、ちょっとやってみようと思えるところまでブレイクダウンしたプランを提案をさせていただくことが多いです。

そして提案自体も、本人やご家族にもいろいろと考えてもらって、選んでもらって「それいってみよう」が多いです。

自分たちで考えて選んだもののほうがやる気がでますものね・・。できればご褒美も考えて用意をしておきましょうか。

このように本人の願いに沿ったポジティブな視点からの自分助けのアクションプラン、場合によっては自助具としてのお薬の使用なども提案させてもらうこともあります。
プランとして主体的、積極的にダラダラ、ゴロゴロするというのもありですね。

そして次の受診時には、そこから話題にはいるという感じの繰り返しとなります


こう考えていたら、診療はAIでも出来るかも・・。いや無理か・・。



↑ストレングストークをまとめた井上先生の本です

↑まず子どもの声を聞いてからという方法

トップへ戻る
タイトルとURLをコピーしました