5/14(土)精神疾患や引きこもりに携わるすべての人に贈るメッセージ

イベント情報

塩尻と松本で障害者のグループホームを手掛ける(株)ハルハウスと、お仲間のはみだし作業療法士二宮あきひろ(Full-rotationN)氏の仕掛ける講演会です。

押川剛氏は「子どもを殺してくださいという親たち」という漫画化もされたノンフィクションの著者で、精神疾患やその疑いのある患者さんの危機的状況時に、危機介入を行い、適切な医療機関につなげ、本人と家族に粘り強く関わるという事業を民間でやっている人だそうで・・・。
株式会社トキワ精神保健事務所
本来なら精神保健福祉センターや保健所、市町村こそやってほしい仕事で、精神医療や公的福祉が頼りない時代やエリアに咲く徒花なのでしょうか・・。

お申し込みはこちら

「子どもを殺してくださいという親たち」


「子どもを殺してくださいという親たち」も読んでみました。
この本100万冊以上売れて、漫画化もされているようです。
キャッチーなタイトルの勝利でもありますかね。

・少数派の発達の特性と、本人にとって逆境的な子ども時代の体験。
・親の期待と社会に出てからの挫折。
・その後の引きこもりと暴力。

これらの結果として母性と父性の順番が逆転すると子どもは退行したままモンスターのように。
親子のバウンダリー(境界線)があやふやなまま、親も腫れ物にさわるように言いなりになって接して退行させる一方で、時に厳しく接して追い詰めて子は爆発する。それを力で抑え込もうとして悪循環に。家族も世間体やプライドから家族の外に助けをもとめることができない。本人は社会を信じられない。対話がない状況の中では子どもは荒れるか引きこもるしかない。

こういった構造の中で本人のこころは満たされぬまま、スキルも身につけられず時間は流れ行動問題だけがエスカレートしていきます。

殺すか殺されるかという膠着した危機的な状況になって、はじめて家族が相談に見えるというケースは私もしばしば経験します。

医療はそもそも心身の健康を整え、自分の人生を生きるための土台(健康)をつくることが役目です。しかし、こういった医療と教育と司法の狭間におちたグレーゾーンの方に公的な支援の手はなかなかとどきません。

かつての手に負えない人は医療や施設に隔離して面倒をみてもらおうという体制から、地域移行の名のもとにかえって家族まかせ、あるいは放置される構造になってしまっているのかもしれません。
こういった方は結果として刑務所にもたくさん収監されているようです。

精神疾患という視点からみても、彼らは軽度知的障害、発達障害、トラウマ、統合失調症、双極性感情障害、パーソナリティ障害などさまざまなものを抱えているとおもわれます。

支援の届かないグレゾーンの人たち


明確は精神症状や、行動問題が出ていないグレーゾーンな人ほど多問題となりやすく問題山積みなのですが、医療も行政も事件がおきるまでは手をだしたがりません。こういった方へ対応する公的機関の精神保健センターや保健所も、医療機関の紹介やそれは警察に相談してくださいとかいうしかなく、なかなか手が出せない状況のようです。
担当も定期異動で変わりますしね。長野県の多くのエリアのように公的精神科医療機関(長野県では精神保健福祉センターや、こころの医療センター駒ヶ根)が遠い地域はなおさらです。

民間の医療機関はといえば、診療報酬の制度上、長期の入院や時間をかけた外来、訪問でじっくりとこういった方へのトラウマケアからの育てる関わりをすることも難しくなっています。
精神科医療にたどりついて、内に入り込んでしまえば特に単科の精神科病院には大きなファミリーのような雰囲気もあったりするのですが・・・。またまずは福祉のサービスを利用して生きていくこともできるかもしれません。

だれもが、なかなか踏み込んだ対応ができない中で、危うさもありますが、押川氏は民間で取り組んでいるようです。
なかなかにセンセーショナルなタイトルで、グレーゾーンな人にかかわるグレーゾーンな取り組み・・。クライアントに限り、24時間365日対応とはいえ、かなり高額なフィーのようですが。
問題となった危険な引き出し屋との違いに関しては、対象者の人権を守るために常に公的な第三者の目を入れるべく家族と一緒に公的機関に出向き、公的機関や医療機関との連携を軸にしているようです。

そして入院できる精神科病院をベースキャンプにという期待が大きいようですね。

できればACTモデルなど精神保健医療で予防的なところから、公的機関、医療機関がそういうことができればいいのでしょうけど、大変さと採算性(診療報酬体系)ゆえ避けられやすいのと、それから精神障害へのスティグマから医療に繋がりにくく、踏み込んだところまで出来るところが少ないんでしょう。
オープンダイアローグ、CRAFTとか動機づけ面接法なども活用して、当初は家族を患者として精神科訪問看護を使うなどいろいろできそうですが、強力なチームやネットワークが必要になりますしここは地域差もありそうです。

押川氏は精神医療と、実際にこういった相談を受けている警察(警察OB)に期待しており、公益法人で各県にこういった相談をうけるおせっかいスペシャリスト集団のチームをという提言もなされていました。
当院でも保健福祉事務所と生活安全課など警察、精神科病院とのコラボレーションはすすめていきたいですね。

さまざまな事例が紹介されていましたが、自分は変わるつもりはないが、子どもの病気を治して自分の思うような子に戻してほしいという親も多いようです。

押川氏は「対応困難な患者がそうなった要因は、親子関係が大きな要因を占めている。」と、まず向き合うために、子どもの行動記録と親の人生の振り返りをすすめるなどのアドバイスも現実的でした。

支援機関に相談の際にも役にたつでしょうし、親としても少しは冷静に客観的になれるかもしれません。

誰がいつ本気を出すのか?

こういったケースになると家族も専門職もそして本人も、だれもが自分ごととして取り組まなければ本人や家族には支援が届きません。

まだまだ必要な方に必要な情報がとどいていない、あるいは親も体面や差別感情から行動ができなかったり他人任せになってしまっている、子どももプライドなどから身動きがとれなくなっているのでしょう。

私がこういった相談を受けた際に、これまで医療機関や相談機関に相談されてきた方でも、バウンダリーの話や、対話の話、ひきこもりのガイドライン(お金の分離、暴力への対応)などの一般論(斎藤環先生のように)ををお伝えしたところ、そんな話は初めて聞いたというようなことも言われます。


具体的じゃないアドバイスは意味がありませんが、本人の思いなどを聴いた上で、それならやってみよう、やれそうというところまでスモールステップにしたアドバイスで行動が少し変わり、親が変わり対話が始まることで、止まっていた時間がすこしずつ動き始めます。

押川氏の言うような「説得」は無理だと思いますが、オープンダイアローグの手法もつかった対話を促す手法でのワンストップ支援組織ができればと思います。
できればわずかな予算などで丸腰のコーディネーターとして民間に委託したり、診療報酬を気にしながらボランティアで動くのではなく公費で力強く動けるような仕組みができればとおもいますね。

同様のことで悩まれている方はぜひご一読をおすすめします。脱!強度行動障害の話題とも繋がりますね。こちらの本もどうぞ↓↓

トップへ戻る
タイトルとURLをコピーしました