子どもに歯科検診で虫歯がみつかったため歯科受診につれていきました。
子どももみているよ〜という近所のデンタルクリニックです。
職業柄、他の医療機関を受診したり付き添ったりする場合は、いろいろ観察してしまいます。
いろいろと参考になることが多かったのでまとめておきます。
ニーズを把握する問診票
まず、問診票です。
チェックを入れていく方式なのですが、痛いところだけ直したい、この機会に全部治したい、予防の方法も教えてほしいなどのニーズを把握する項目がありました。
そういえば、成人のときには自由診療も多い歯科は保健の範囲か、自由診療も含めた最も良い方法か、その都度相談してきめたいか、などという項目もありました。
このあたりは医療機関によっても違いそうですが、メンタルクリニックでも真似できる部分はあるかもしれません。
どのくらいのスパンで通いたいか(通えるか)、メニューのように薬物療法、心理療法や検査など出来ることを提案した上でのニーズの把握に関する項目をいれてもよさそうですね。
その上であらためていろいろ相談していければと思います。
多職種の連携
デンタルクリニックでは助手が案内し、歯科衛生士(歯科における看護師)さんが口腔ケアやチェックを行い、歯科医は一瞬登場して歯を削るなどコアな部分のみ関わってまた歯科衛生士さんにバトンタッチするという連携でやっていました。
高齢者医療や在宅医療の口腔ケアなどでは衛生士が訪問したり、がん治療の前の口腔ケア、栄養士や言語聴覚士などともチームを組んでの摂食嚥下チームにも加わったりなど連携も増えているようです。
病院勤務時代はお世話になりました。
メンタルクリニックでも内部の職員では医師、看護師、ケースワーカー、心理士、事務スタッフと協業していいます。
また外部との連携では職域、警察、保健所、学校(教師)、児童相談所、児童家庭支援センター、行政(障害福祉課、子育て支援課)、職域(上司や産業医、産業保健師、EAP)など連携は多岐に渡ります。
標準的な薬物療法、個人療法ももちろんやりますが、私的には、むしろ診立てと対話の促進、連携のハブとなることが主たるサービスと思っています。
プレパレーションは歯科は上手
初めての歯科受診だった子どもにも丁寧に説明をし、鏡をもたせてくれたり(意味や見通しを見せる)、治療の終わった後にシールを選ばせてくれたり(課題のあとの報酬)、歯科トラウマをつくらないように気をつかってくれていました。
診療後にコインでガチャガチャさせてくれるところもあるようですね。
ABA(応用行動分析)を学んでいるのか、子どもを相手の歯科では常識なのかな、とてもいい方法だと思います・・。
障害者歯科という分野ではASD児へのプレパレーションなどは歯科が身体科一般より研究も実践も進んでいるように思います。
重度の知的障害と自閉症を併存する方の行動障害が悪化する原因として身体的不調、特に虫歯など口腔内の問題などはよくあります。
以前うけた自閉症への歯科診療について、松本歯科大にいらした小笠原正先生の講義は素晴らしかっです。
⚫︎ASD児の歯科治療はMR児より難しい。 ⚫︎不要なことはしない。嫌いなものを避ける。 ⚫︎視覚的支援などの合理的配慮はやりつくす。 ⚫︎押さえつけてやると反応もわからず、危険性も高い。課題もわからない。心的外傷を負いのちのち脱感作に苦慮する。 ⚫︎奇声が適応性の判定に感度特異度が高い。 ⚫︎不安階層表を意識して治療を目的としないトレーニングを。 ⚫︎感覚過敏はトレーニングは難しい。 ⚫︎嫌なことをしなければその後も上手くいく。 ⚫︎レディネスができていない方(発達年齢が4歳以下)には前投薬→笑気→静脈麻酔で鎮静。 ⚫︎動画、写真、絵を用いて意思決定支援。判断能力のアセスメント。ガイドライン作成中。 ⚫︎かかりつけ歯科医の選択理由。家から近い、障害に理解がある。という意見が多い。 ⚫︎個々をちゃんと理解してくれるところが選ばれる。 ⚫︎開業歯科は無理せず無駄なく出来ることを。安全性重視、医原病の予防。 ⚫︎高次医療機関はストレスなし、効率的に。
これだけでもASD(自閉スペクトラム症)の療育や関わりのエッセンス全部入りという感じですね。
学校など教育領域でも学んで実践してほしいところです・・。
デンタルもメンタルも玉石混交、数も多い?
歯科とメンタルクリニックは他の科より玉石混交といわれます。
歯科大学が増え、歯科医が多くなったせいもあるかもしれません。歯科医院は数も多く、どの街にもあり、身近な存在です。
一方のメンタルクリニックは松本などの地方都市にはまださほどはありませんが、検査機器などの設備も他科ほどはいらないため比較的手軽に開業でき、都市部には駅前のビルなどにフランチャイズで展開するところもあるようです。
しかし、精神科のトレーニングをきちんと受けていない医師がいるところもあり、クオリティは様々だと思います。
保険診療ではありませんが、開業の心理オフィス、カウンセリングルームもおおいです。
自分の受けている治療が標準的なのか、時代遅れなのかわからないというような、情報の非対象性もあります。
SEOのために疾患ごとの情報などについて作り込まれたウェブサイトなどもありますが、ここはやはり口コミに頼る部分が大きいでしょう。
もっとも逆にYoutubeなどでどんどん情報発信している精神科医もいますね。
たとえば 精神科医がこころの病気を解説するCh など・
しかし歯科やメンタルの治療をはじめてしまってから途中で変えるというのも勇気のいることかもしれません。これは、何かおかしい、相性があわないとおもっても、最初にいったところから変わるという決断がやりにくいということもあるかとおもいます。(スイッチングコスト)
特にメンタルクリニックに何しては、メンタル不調のときにはなかなか別のところに行くというエネルギー自体ない場合もあります。精神科の初診の予約が取りにくい地方などはなおさらです。
しかし、どう考えても精神科のトレーニングを受けたことがないような医師や、独自の治療をする医師もいて標準的治療から大きくはなれたところもありますので、おかしいと思ったらセカンドオピニオン、サードオピニオンなども気軽に受けられるとよいかと思います。
信頼できる精神科専門医をどう選ぶか ~病院不信とクリニック乱立の時代~
予防(メンタルヘルス)に力をいれる時代かもしれない
歯科は定期検診やセルフケアの指導など予防に力を入れてるようになってきているようです。
ブラッシングや口腔ケアの方法なども丁寧に指導してくれます。
精神科診療、メンタルヘルスもその方向ではないでしょうか。
職域ではストレスチェックが義務付けられ、産業医の面談などが義務付けられましたが、そもそも過労などの労務管理ができていなかったり、職場でのハラスメントなどもまだまだ多いです。
心理的安全性が乏しく病んでいるのは職場の場合もあります。
そもそも自分にとって合わない環境で、不適応状態で頑張るというのはストレスがたまることです。
いったん精神疾患を発症してしまうとそこからのリカバリーは大変です。
特に少数派である知的・発達障害があるとメンタルヘルス上のハイリスクです。
多数派の普通にこだわらず、自分にあった場所で、自分の特性、志向性にあった生き方を追求しないとストレスだらけでしんどくなります。
通常とはちがうい支援の必要な障害をもつ子どもの子育ても少数派の子育てになります。
本人の特性に気づかない、気づいてもあわない育て方を強要することは虐待やネグレクトに近くなり、自己肯定感、レジリエンス(逆境から立ち直る力)を損ないます。
逆境的な小児期体験(心理的虐待、身体的虐待、性的虐待、家族の依存症、家族の精神疾患、DV、家族の犯罪)も様々な精神疾患のリスクになります。トラウマに配慮したかかわりというのが必要です。
また親離れの時期でもある青年期に好発する精神疾患は早期から注意してフォローしつつリスクの軽減などの処置が必要です。
ですので、リスクの高い方は、ある時期、ある場所で適応して過ごしていても生きたいる限りさまざまなライフイベントがありますので、定期的に(例えば精神保健福祉手帳の更新時など)精神科につながっておき、メンテナンスをおこない、眠れないときや誰に相談していいかわからない悩みができた時に気軽に相談できる体制をもっておくということも大事なことかと思います。
受診された場合は、本人と周囲の環境の適応具合、またセルフケア能力やレジリリエンスなどに注意を知てお話をうかがい、これから起きうることにたいしてアドバイスをさせていただいています。