医療とスクールカウンセラー、学校との連携

コラム

子どものこころの発達に関する医療をおこなっていると、どうしても学校や教育と関わることになります。学校不適応や不登校の子に関わることも多く、学校と親と子どもの間にはいって御用聞きをしています。学校の現場とどう対話しつつ連携をしていけばよいかは双方の課題です。

風邪みたいなものって?

スクールカウンセラー(SC)に相談したときに、「風邪みたいなものだから、受診するかどうかは本人、ご家族次第です」と言われたという方がおりました。

スクールカウンセラーが関わりおそらくその子どもの不適応があったり、特性などに気づかれたのだとはおもいますが、「風邪みたいなもの」というのはどうなんでしょう。
結局、その後、何年もあいてから二次的障害で医療に受診に至ったわけですので、その時点で出来ることはなかったのでしょうか。

そういえば、うつはこころの風邪という言い方が広まったことがあります。抗うつ薬を販売する製薬会社の戦略といわれています。
これは誰にでもなりうるというよくある病気である意味であり、「うつ」のスティグマを軽減する作用はあったかもしれませんが、「うつ病」は当事者にとってはそんなに優しいものではありません。こころの肺炎、こころの疲労骨折というべきものです。
そして風邪には、自然治癒するものだというニュアンスもある一方で、万病のもとともいわれています。


スクールカウンセラーは、さまざまな精神症状、自傷行為や行動問題から愚痴へは最初のステップであり、まずは本人をまるごと受け止めるということは大事にしてもらいたいところですが、そこから本人、そして周囲にどんなアプローチができるのかということもまた大事です。
アセスメントをもとに具体的な手立てを先生たちと共有して、子どもたち一人ひとりにあった育ちの環境を保証してほしいところです。
もっとも、ここはスクールカウンセラーの力量と、学校側の体制にもよるわけですが・・。

そこで医療も学校と親とともにチームに加えていただき関わらせていただけると時間的、空間的に岡目八目の立場から出来ることがいろいろあると思います。
カウンセラーは医療が遠すぎたか、医療につないでも上手く行かなかった経験があるのかもしれません。

なんとか最前線で格闘する先生や親、スクールカウンセラーを医療としてタイムリーにサポートしたいとどうじに地域全体でレベルアップしていければと思います。
ここのコラムもそういった思いで書いています。

スクールカウンセラーとチーム学校



学校では「チーム学校」ということが言われてきているようです。

学校は教諭だけの世界から、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー(SSW)、特別支援教育コーディネーター、養護教諭、学校医などいろんな職種がいて、また保健師や計画相談等も福祉の支援者も外部からも出入りするようになりました。

しかしなかなか外部の支援が入りにくい閉じた学校もある一方で、どんどん色んな人が関わる開かれた学校もあり学校ごとでの差は大きいようにおもいます。

学校のスクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーは県や市町村の教育委員会が採用しています。スクールカウンセラーは臨床心理士、学校心理士、臨床発達心理士、元教員など職種の背景もいろいろあるようです。
それに加え基本的な部分の保証と連携のための国家資格として公認心理師ができ、公認心理師+各種専門資格というようになっていくのでしょうか。

私立の高校などには常勤のスクールカウンセラーもいたりもしますが、多くは週に半日(年に140時間とか280時間)などの勤務が多く、医療機関の非常勤や、カウンセリングルーム、複数の学校のカウンセラーを掛け持ちしていたりする方が多いようです。

学校ごとでスクールカウンセラーがどのような立場で、活用できているかは本当に様々なようで、面接をつづけていて、「次年度は心理面接は継続できないかもしれないつもりで関わってください」といわれるようで、それでは大変だなあと思いました。

子どもや親との個別のかかわりだけではなく、いかにつないだり現場の先生たちをエンパワメントできるかということも問われているように思います。

医療と教育の連携

学校で行動問題がでると、医療でなんとかしてほしい、薬で抑えてほしいと、子どもの体験を無視して周囲のニーズでの医学的治療を求められることもありました。
しかし、そういう医学モデルだけでいいケースというのはほとんどありません。

私自身も、臨床では本人へのアプローチ半分、環境や関係性へのアプローチ半分のつもりで臨床をおこなっています。そういった実践を続けることで社会も少しでもいいものにしていきたいという思いがあります。

SCやSSWの研修会に呼ばれたり、合同で事例検討をおこなったり、高校や総合教育センターの嘱託医(アドバイザー)なども頼まれるようになり、教育行政や現場の先生方とも対話を重ねる中で、教育の世界の文化や文脈もなんとなくみえるようにはなってきました。

学校医などがDoctor of developmentとして、学校でのさまざまな健康問題、メンタルヘルスに関しても機能していればいいと思うのですが、学校に小児科医、内科医、耳鼻科や眼科はありますが、実は精神科は入っておらず発達領域、精神医療領域は手薄なようです。

三重県や東京都では県立高校で学校精神科医を派遣する仕組みがあるようですので、長野県でも実現されればいいなとおもいます。

そういえば2022年4月から高校の学習指導要領(保健体育)にも精神疾患が入りました。メンタルヘルスリテラシーの向上のために、一臨床医としてお手伝いはできることもあるのかなとおもいます。

しかし医療制度においては、教育との連携はさほど考えられておらず、支援会議にでても診療報酬もつかず、無料でのご奉仕になります。それを教育関係者に話すと知らなかったといわれて驚かれたりします。こちらへの期待値が高すぎたり、低すぎたり、個人情報の扱いもこなれていなかったりということもあり、お互いに連携に慣れていく必要があります。

とはいえ今後のためにも全く無償では厳しいので、受診に同行してもらって医療機関で支援会議をおこなうか、オンラインで参加して電話再診料で算定するか、学校医宛に診療情報提供書を作成させていただくか、嘱託にしてもらうか、研修などで呼んでもらう形にしていただくとありがたいです。

過剰適応の状態で我慢をかさね、いよいよ辛くなり休養、治療からではなく、公衆衛生、予防医療、メンタルヘルスの問題として子どもたちの育ちの環境に関れればと思っています。

いろんなところから御用聞きをしつつ医療としての手立てと見通しを示して、それぞれの子どもにとっての育ちの環境を保証できればと思います。チーム学校においては医療も必然的にチームに加わり、本人を取り巻く育ちの環境をどうするかということを一緒に考えていきたいものです。






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