精神科におけるセカンドオピニオン

セカンドオピニオンは権利です

セカンドオピニオンというものをご存知でしょうか?

これは今かかっている主治医から提示された診断内容や治療方針について、別の医師に中立的な立場で求める第2(セカンド)の意見(オピニオン)のことです。
患者さんは、ご自身が受ける、または受けた医療についてセカンドオピニオンをうける権利があります。

セカンドオピニオンは患者さん自身が、納得のいく治療法をえらべるようになることが目的で、本来は主治医を変えるためのものではありません。また今の診療情報提供書や検査結果などをもって意見を聞きに行くのが中心であり、基本的には診察や検査などはおこないません。

大きな病院などでは私費で、がん治療などを始めとしてセカンドオピニオン専門外来の仕組みを整えているところも多いようです。

セカンドオピニオンを受けたいという申し出に対して拒否的な反応を示す医師もいるそうですが、そもそもそういう医師からは離れた方がいいかもしれません。

かつて私のもとへ通院されていて、他の医師や医療機関での意見も聞きたいという方もいらして、県内外の有名な医療機関に5ヶ所出向いていろいろ聞いてこられた方もいました。私も大変勉強になりました。

希望される方は診療情報提供書をお書きしますので、ぜひいろんな医療機関や医師などに自分の診断や治療に関しての意見を納得するまで聞きに行っていただければと思います。


精神医療におけるセカンドオピニオン


ところで精神科の場合は、出会いから治療までが連続した一体なものになることが多いです。

発達障害にしろ、統合失調症にしろ、双極性障害にしろ、多くの精神疾患、精神障害は生活とも密接にかかわる慢性疾患で、さまざまな生活障害をきたします。

薬物療法に関してはエビデンスを元にエキスパートが集まって作られたガイドラインに沿った治療が行われているか、職種連携の中で、使えるリソースは十分に活用されているか、諸機関と連携がとれているかといったことがまず重要になってきます。

これらの基本さえ押さえられていれば、主治医とともに処方をあわせ、治療をすすめ、必要な支援を求め、どこで、だれと、どのような生活をするのが良いのか本人の状況や価値観にそって検討して出来るところから整えていくことになります。

ですので、mECTやクロザリルなどの高度医療の適応に関してというようなトピックスが絞られたもの以外は、他の診療科のようなセカンドオピニオンの形は実は難しいところもあります。


ただ精神医療に関しては、がん治療などのように均てん化もすすんでおらず、基本的なところが実際微妙な医師もいるようです。また医師ごとで得意とする領域もさまざまで、個別性も強く、相性もあるので、どうも合わないなと感じたら、3ヶ所くらいは受診してみて選ぶのもいいのではと言っていた某有名精神科医の書いたコラムをみました。

日本の医療(保険診療)は今のところフリーアクセスであり、どの医療機関に直接かかっても構わない制度にはなっています。かかりつけ医からの紹介状がないと大きな病院ではお金がかかり、自立支援医療制度(公費負担)を使っている方は登録した精神科医療機関以外のところにかかる場合は自己負担分はかかるなどの誘導はありますが。

そうはいっても、あまりにドクターショッピングばかりだと青い鳥探しになり、結局本人の回復からは遠のく場合もあるかとおもいます。

ある領域で有名な遠方の医師のもとにはるばる馳せ参じて通っていた方を引き継ぐこともありますが、ケースワークなどが全くできておらず地元のリソースが使えておらずに残念だったなあと思うことも経験します。だから私も遠方の方はたとえ希望があっても診療はなるべくしないようにしています。

そういうわけで精神科においては実際にセカンドオピニオン希望といっても、診療情報提供書をもって主治医交代の可能性も含めて他の医療機関へ受診してみるという方が多いように思います。

頻回のモニタリングが必要な副作用の出やすいお薬を行う場合、合併症がある場合などは総合病院の精神科がいい方もあるでしょうし、調子を崩しやすい方、時期には入院設備やデイケアなどもある精神科単科の病院がフィットする方もいます。単科の精神科病院は患者やスタッフも含めて大きな家族のような雰囲気があったりします。

通いやすい場所にあるクリニックがいい方もいますし、細やかなケースワークが必要な方もいます。
むしろ心理職によるカウンセリングが合う方もいます。カウンセリングは保険適応にはならないためたいていは私費ですが。外来での作業療法や、リワークプログラムなどがフィットする方もいます。多職種による密な訪問により生活を支えることが必要な方もいます。
多職種による支援が行われていれば医師の役割は処方と診断書、健康管理だけの役割になります。

そうなってくると、主治医や医療機関との相性もありますし、現実的に通える範囲にあり、長く付き合い続けられるかということがやはり大事になります。

主治医とコミュニケーションを取る方法




患者会などで話をしていると、主治医とのコミュニケーションがなかなか取れないという悩みをよく聞きます。

診立てに関しても、表面的だったり、ワンパターンな治療をおこない治療方針に関してもあまり説明をしない医師もいます。治療としてはそれでいい場合もあります。
要は患者さんの人生がいい感じになればいいので。

精神科の外来での診察時間は多くの場合、限られますので、患者さん自体が積極的に納得できる診立てや手立てを求めていく事自体が、主体性を取り戻す過程でもあり、治療的でもあります。
事前に受診用のノートを作り、症状や聞きたいことを受診前にまとめておくこと、聞いたことを記録していくこと、そのために質問促進パンフレットなどのツールを使われることなどをおすすめします。
アプリ版である、診療サプリというものもあります。

主治医からの「眠れてますか?お薬飲めてますか?」という質問に答えるだけの診療なってしまっている方はこういうものをつかって少しずつ主治医とコミュニケーションをとってみてはいかがでしょうか。

個人的には、質問促進パンフレットの児童・発達版も作れると良いかなあなんて思っています。

その上で納得が得られる説明が受けられないようでしたらセカンドオピニオンも考えてみられると良いかと思います。

特殊な薬を使う場合、専門性の高い領域の場合も



特定の医療機関しか使えないお薬や治療法を考える場合にも、セカンドオピニオンを考慮されるとよいでしょう。

入院治療の適応や、mECT(修正電気けいれん療法)やrTMS(反復経頭蓋磁気刺激)などの特殊な治療、心理教育プログラム、コンサータやクロザリルなどの適応についての意見を聞くというのはセカンドオピニオンというのはありえるのですが、その場合も、こういった治療を受けられる医療機関へ意見を聞くので転院の可能性も含めてとなりますね。

緊急で入院が必要な場合はセカンドオピニオンなどという悠長な事を言っている場合ではない事が多いでしょう。一方で急がない場合の入院に意味がなくむしろ回復から遠のいてしまう場合もあります

薬物療法やmECTなど切れ味の鋭い効果のある薬や治療法ほど、副作用も難しく多いものです。
多くの場合、無難な処方や治療から入りますが、それで効果が乏しい場合、専門医ほど多様な方法でそこに切り込むことができます。

ADHDの治療薬であるコンサータ、ビバンセという薬は、精神科医でも処方できる医師とできない医師がいます。
精神神経学会の専門医、あるいは推薦を受けた医師で、関連学会に所属しており、WEBなどでの研修をうけた医師でなければ処方できません。ADHDと診断されており、これらの薬を使ってみたいという方は、処方が可能な医療機関を受診する必要があります。

また、統合失調症にと診断されており、治療抵抗性の統合失調症治療薬であるクロザリルの使用の可能性を検討する場合もセカンドオピニオンを求めると良いかと思います。


クロザピン(商品名:クロザリル)は、既存のさまざまな薬をある程度の量きちんと服用していても症状が改善しない状態のもの方(治療抵抗性の統合失調症)に適応のある薬です。古くからある薬ですが、以下で述べるような副作用のために我が国では長らく使えませんでした。
家族会などの要望もあり、日本でも2009年からやっと使えるようになりました。
顆粒球減少症(細菌と戦う血液中の細胞が突然減ってしまう)という恐ろしい副作用や心筋炎、糖尿病などの副作用があります。すぐに発見し、血液内科などの身体科と連携して対応できるような体制で使用する必要があります。
ですので当初は入院で導入し、厳密なモニタリング(2週間に一度の血液検査、クロザリル患者モニタリングサービス(CPMS)への登録)を受けながら治療をすすめていく必要があり、処方できる医療機関が限られています。

私も入院医療を担当していた時に何人も使用経験がありますが、目覚ましい回復をみせ、安定した状態が維持できるようになり社会復帰された方がいた一方で、さほど効果の感じられなかった方、発熱や顆粒球減少などの副作用で使えなかった方もいました。

またてんかんに関しても新しい薬が次々と出てきており、こちらは最近の精神科医が苦手とするところですので、ビデオ監視下の脳波モニタリングによる発作型の診断、手術適応の可能性なども含めて、発作ゼロ、副作用ゼロでなければ、一度、てんかんの専門外来の受診をおすすめしています。

今の治療に関して疑問がある場合や、主治医の説明が不十分な場合には、セカンドオピニオンは権利ですので、積極的に求めていかれることをおすすめします。

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