5月16日に「対話から始める 脱!強度行動障害」という本を出します。

コラム

言葉のない自閉症の方が訴えること

発達障害者支援法が施行され発達障害というものが広く知られるようになってきました。

しかし知的障害をともなう重度自閉症(古典的な自閉症)の方との関わりに関しては、実は方法論は確立している(TEACCHプログラムでほぼ完成されている)ものの、我が国の現実として、未だに親も教育も地域社会も同じような失敗を繰り返しており、多くの方を二次障害や強度行動障害にしてしまっているのではないかという問題意識がありました。

精神科の病棟や外来、訪問、行政機関、教育機関、福祉機関などの様々なフィールドで、知的障害をともなわない発達障害の方と知的障害を伴う発達障害の方の双方に関わり、様々なライフステージの方を支援し、親の会や当事者会にも関わり、国内外の調査研究などの知見もあわせることではじめて見えてきた世界もあります。

必要なのはPECSやおめめどうなどの視覚的支援ツールをもちいたコミュニケーション支援、そしてそれを使った当事者との、そして関わる人も含めた対話の継続です。(その他に感覚の問題などもあり、支援者も当事者も自分との対話も継続していく必要がありますが。)

ひとつの専門性でひとつの専門機関だけにいてはなかなか得られにくいであろうこういった視点を、渦中にいる当事者や親、医療や教育や福祉の支援者に伝えたいという思いがあります。

特に自傷や他害、頑固なこだわり、パニックが頻発するいわゆる強度行動障害の状態にいる方に関しては、スキルと思いの双方が噛み合った強力なチームをつくって行政や地域社会を巻き込んでいかないとなかなかすすまないということは身にしみています。
支援者の中での本音のところでの対話も必要です。

2022年4月4日 信濃毎日新聞の記事

これまでにない強度行動障害本ができました。


このたび長野県の発達障害支援の礎を築いてこられ、厚生労働省でも技官として発達障害施策に関わられてきた日詰さんと、強度行動障害の医療に関して専門病棟もつくり実践されてきた愛知医療療育総合センター中央病院の吉川先生にも共同編者に加わっていただき、この領域で実践をされている方々に声をかけて「対話から始める 脱!強度行動障害」という本つくり、日本評論社から5月16日に出版が決まりました。

Facebookの情報交換のグループである「脱!強度行動障害」の参加者を中心に、おめめどうの奥平さんやDr.PECSこと門眞一郎先生をはじめ、全国のいろいろな立場のお仲間が記事や対談に参加いただきましたが、実に濃ゆいメンバーです。

特に強度行動障害、自閉症、知的障害、思春期、視覚的支援等のキーワードが気になる方、行動問題で悩まれている方にはヒントにあふれているこれまでにない本だと思います。

アマゾンでの予約も始まっていますので、よろしければ予約をしてお求めください。
(クリニックの方でも販売させて頂く予定です)


目次

【パート1 思春期以前】
第1章 強度行動障害の背景にあるもの,予防のための工夫……吉川 徹
第2章 強度行動障害の予防とコミュニケーション支援……門眞一郎
第3章 教育領域における強度行動障害の予防……新井豊吉
第4章 強度行動障害の予防につながる家族支援と地域啓発 ……荻野ます美

[座談会1]立場を超えて対話しよう!
        ……門眞一郎、新井豊吉、荻野ます美、吉川 徹

【パート2 思春期~青年期】
第5章 対話を止めるな――人権侵害が行動障害を生む……樋端佑樹
第6章 しくじり思春期――母子分離の重要性……奥平綾子
第7章 重度知的障害者の自立生活とパーソナルアシスタンス……岡部耕典
第8章 親としてできること,親にはできないこと
    ――「対話」から始める「脱!強度行動障害」を観点としたまとめ
      ……伊藤あづさ

[座談会2]本人・親・支援者の関係性を考える
        ……岡部耕典・伊藤あづさ・長瀬慎一・樋端佑樹

【パート3 成人期~高齢期】
第9章 成人期から高齢期の強度行動障害の問題……日詰正文
第10章 成人期~高齢期の支援について思うこと――行政の経験を踏まえて……片桐公彦
第11章 強度行動障害支援における医療と福祉の連携……市川宏伸
第12章 強度行動障害支援者養成への組織的アプローチ―マネジメント、
    ガバナンス、リーダーの役割を通して……松上利男

[座談会3]若い世代の支援者に伝えたいこと
        ……中野伊知郎、西田武志、新谷義和、日詰正文

【コラム】
うちの家訓は枠よりワクワク♪……稲田友美
強度行動障害は5日間(100時間)で改善できる……長瀬慎一 
映画『道草』をめぐって……宍戸大裕 
親の立場で、法律などの正しい知識を前提とした、対話という「闘い」 ……金成祐行

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