10歳からは引き算の子育てですよ

思春期青年期以降のトランジションで引き継いだケースで、しばしば障害受容(障害からの自由、自己理解と援助希求)が出来ない、ひきこもりが長期化したり、行動障害がでて大変という相談がよくあります。

こういうケースでは発達診療、支援をうけていても、思春期に入っても親のみが受診して、ほぼ薬を受け取りに行っているだけ、本人がいても主治医や支援者はずっと親と話をしているなんてことが多いように思います。

本人と筆談などで丁寧にコミュニケーションをとればできるはずなのですが、それには時間も手間もかかるので主治医や支援者も親とだけ話をしがちです。

本人が進学や就職などで実家をはなれて県外に行ったりした場合でも親だけがお薬を取りに来て、本人は年に一度行くかいかないかというのもよくありません。自分の健康やメンタルヘルスのことなのですから、そこは帰省したとき、あるいは居住地の専門家と直接本人が対峙していくことが大事で、優先順位を上げてほしいです。

ひどい場合だと親が本人に内緒で(ブラインドで)液体のお薬を飲み物にまぜるなどで投与し続けていたり、本人はうまくお金を使えないからと本人に内緒で年金を申請していたりしてトランジション後にこじれるなんてこともありました。

こういう親子に初めてお愛した診療のときに、本人に分離の選択肢を示すと、本人も「どっちでもいい」といったり、親が意外そうにしたりするのでわかります。

どちらかを選んでというと「では1人で」というと、そこで親がびっくりするなんてこともあります。

本人とやり取りして、コミュメモなどでコミュニケーションのとりかたを示して見せて、親は子どもは親の持ち物ではない、子どもは親に自己主張していいということを学習してもらう必要がありますが、トランジションの段階でここからなのかとため息がでたりもします。

本人の主体性や自他境界の感覚を育むためにも、発達早期からフォローする役目の医療機関は「親はバウンダリー(自他の境界線)ひいて関わって、視覚的ツールも使ってきちんと対話して、10歳からは引き算の子育てですよ」ということは具体的な方法とともに折に触れて伝え続けてもらいたいです。

また本人とも関係を作り直接対峙してコミュニケーションマインド(自分で適当な支援者に直接援助希求をし助けられ、相談して解決していく経験)を育てて欲しいですね。

そして成人になったら親(実家は)は、もし社会でいろいろうまくいかなかったときに、最後に相談でき転がり込んで寝るところと、食うものくらいはある場というくらいに親も子どもも考えておくくらいがいいのではないでしょうか。

このあたり特に発達診療されている小児科の先生がたの診療では抜け落ちがちなピースで、発達障害の診療医の養成講座などでもこのあたりは強調されては伝えられていないようです。

このあたりをおめめどうの奥平綾子@ハルヤンネさんの自分の体験と考察を記述した、おめめどうの新刊「母子分離の重要性」もぜひご一読ください。(待合室の本棚にもおいておきます)

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