新年あけましておめでとうございます。


みなさん新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくおねがいします。

思春期青年期の精神医療


私はクリニックでの精神科医という仕事をしています。

10歳くらいからの子ども診ていますが、思春期や青年の方、そして子育て中の親の立場の方に多く関わるようになりました。
特に発達障害や精神疾患などをかかえ、さまざまな生きづらさをかかえる若者たちの思春期と青年期の親離れと学校や社会の中での試行錯誤(トライアルアンドサクセス)をお手伝しています。
縁があって関わるからには、どんなことでも成功体験になるように伴走したいとおもってお付き合いをしています。

私自身も、親や周囲の大人、同世代の人との関係、生き方に迷うことが多かったように思います。

自分の立ち位置を見つけるために古今東西さまざまな本もたくさん読み、たくさんの人と話をしてきました。
そして他者や人の群れとの距離をとったり近づいたりしながら、自分自身が長い青年期を経て、やっと以前よりは多少は楽に楽しく生きられるようになってきたように思います。
思うことは好きなこと、できることを増やして社会と交わる場所を探し、嫌なこと苦手なことはできるだけ人に頼み、自分らしく生きられる場所をみつけ楽しんだものがちです。

思春期とは子どもから大人へ身体もこころも大きく変化する時期です。
そして親子双方が思春期以前に積み残してきたさまざまな課題が噴出します。
思春期が大変になる親子をみていると実は親も子ども時代を積み残していたり、心に傷(トラウマ)を抱えていたり、大人になりきれない青年期が続いていたりする場合も多いように感じます。

さまざまな発達に障害をもつ子どもや若者と関わる中で感じることは周囲の人が「大人扱いしないと子どもは大人にならない」ということです。親が大人になれていないと子どもに依存してしまい、いつまでも子ども扱いします。するとと子どももまた大人になれないまま次の世代へ課題を送ってしまうというサイクルがつづいてしまうことになります。

診察はセッション

私は臨床場面はセッションであると考えて日々診療をしています。
オープン・ダイアローグを知ってからそれ強く意識するようになり臨床はかわりました。
診察室には様々な形や色の椅子を配置して、家族や、さまざまな支援者などたくさんの人がサークルになって集い、さまざまな声があふれる対話ができるように工夫しています。
そしてグラフィックファシリテーションを意識して大きなホワイトボードをおいています。ホワイトボードに時間、空間、抽象的、具体的ないろんな図や選択肢を書きながら視覚的に整理していきます。できるだけ自分はファシリテーションに徹し、共同作業で完成させ、カルテに貼り付けたり写真をとったりする。様々な例えも使います。

臨床の診療場面でやっていることは実は結構シンプルです。
まず情報を整理して個別に子どもをエンパワメントし、親の子離れの辛さに対してのグリーフワークをおこないます。それだけで親子の関係性に変化がうまれ上手くいきはじめる場合もあります。


しかし通常以上に手をかけ、自分の人生を諦めてきた場合には、知らず知らずのうちに子どもに依存し子離れは苦しいものになります。思春期に子離れをスムーズにすすめていくためには子どもに様々な障害がある場合にこそ親を孤立させないように早期から多くの手を入れて対話を繰り返していくことの重要性がわかります。

どんなケースであっても親子の合同セッションや、関係者があつまったケア会議が非常に重要であると考えています。オープンダイアローグのような対話の機会は必ず訪れます。
いや必要なら作りますし、出向いていきます。
困った人、いや困っている人の強みに光を当てて対話を繰り返しそれぞれの体験を開き、参加者で共有します。
そしてさまざまな対話を可能にするような場をつくります。鍵となるのは早期からの具体的な手立てと見通し、そしてそれぞれの仲間づくりです。周囲の人との関係、まさに本人を取り巻く環境です。
とくに「まなざし」がかわると苦しかった関係性がダイナミックに変化し始めます。

ノウハウをまとめたネタばらしの本を作ります


さて、なかなか予約がとれなくなっておりすみません。
自分の臨床自体は、診断書とお薬、医療の各分野との連携という精神科医に求められる役割を最低限果たしたあとは、いろんな技法や理論のいいところをとって使っています。

エビデンスというほどのものではありませんが、他の人があまり言っておらず、自分が言葉にしてまとめる価値がある視点もあるのではないかと思っています。
今年は、プラットフォームとしてのこのクリニックの診療をよりやりやすく持続可能なものしていく土台作りとともに、自分のこんな実践を書き溜めてまとめて、本を出せればなあと思っています。
どちらかというと専門職の方に向けたものを考えていますが、親や若者の当事者の立場の方が読んでいただいても役に立つと思います。診療場面で繰り返しよく話しているネタ帳みたいなものです。

このあたりをもとにさまざまな場で対話が広がればうれしいなあとおもいます。
本年もよろしくおねがいします。