発達途上の子どもに依存症ということに少しモヤモヤ

コラム

先日、長野県内の支援者向けに開催された、こころの医療センター駒ヶ根病院の公開講座「インターネット・ゲーム障害の子どもたちへの支援」を聞きました。

備忘録的に内容の一部や、このテーマについての考えや自分の実践をまとめておきます。

子どものネット&ゲーム依存の治療と回復


講師はこころの医療センター駒ヶ根病院で依存症診療をされている足立順代先生で、話しぶりや講演内容からもとても丁寧な診療をされていることが伝わりました。
県立の医療機関がこの春から本格的に専門外来や入院プログラムをつくり多職種のチームで関わっていただけるのはありがたいことです。

ネット・ゲームは依存性があり、耐性や離脱症状もあります。
そしてコントロール障害、生活機能障害となると依存症となります。
インターネットゲーム依存はICD11(国際疾病分類第11版、2019年採択、2022年から発効)で診断基準として収載されました。

インターネット・ゲームの使用をコントロールできなくなる。

インターネット・ゲームの使用が最優先する。

否定的な結果でも、インターネット・ゲームの使用を続ける


スクリーニングツールや重症度判定、治療に関しては世界中で試行錯誤の段階です。
アルコール依存症と同じようにCAGEとかでも良いのではないかとおもいますが・・。
標準的治療に関しての確定した結論は出ていないということですが、なにかしら治療として「関わる」ことが予後をよくすることは間違いないようです。

依存症としての専門外来や入院治療プログラムは、依存しやすい環境からいったん離れデトックスして離脱症状を乗り切ったり、家族と距離をとり、家族は家族教室に参加したりで関係性を改善したり、同じことで苦しむピアの仲間と出会えたりするという意味はあるようです。

またはるばる時間をかけての通院が親子にとってのスペシャルタイムになるという効果もあるかもしれません。

一方で、ゲーム依存は流動的、可変的であり自然回復もありうるとの調査研究もあります。

自己治療仮説というのもあるように、依存症というのは意思の問題ではなく環境の病でもありますので、発達途上の子どもに対して依存症とラベルを貼り、回復を目指して「強くなるより賢くなれ!」と求めるのは私には何となくモヤモヤします。

依存症治療で有名な久里浜病院のスタイル(ここ駒もそのモデルを踏襲しています)がフィットする群の子どもはどのくらいの年齢、知能や発達特性の方のでしょうか。
また病気のラベルを貼り医療加するのは、親や周囲の人が子ども本人をただ責めないというメリットはあるかとおもいますが、子ども本人にネット・ゲーム依存を疾病として外在化して伝えることがメリットが多いのは、どういう条件の場合なのだろうかという疑問がわきました。

ストレングストークとPBS、ダイアローグ



ちなみに私の診療は、ゲームやネット依存に限ったことではないですが、まず子どもたちの隠された強みにについて話す、ストレングストークをおこないます。
私自身のストレングスと基本に子どもとつながり、ポジティブな相互作用を引き起こします。これは診断や状態を問わず、どんな状態の子でも使えるスキルです。

まあ、楽しく好きな趣味の話しや、できることの話をしているようにしか見えないかとおもいますが・・。(実際そうなんですけど💦)


そして、あわせてやってみようかなと思う程度にブレイクダウンした活動等の選択肢(アクションプラン)の提示、積極的行動支援(PBS)をおこない、あわせて親子の対話が継続できるようにして関係性の改善を支援を行います。
約束なんかも診察室で相談したりもして、双方が守れるように支援します。親から破っちゃう場合もおおいですので・・。

人生をゲーム化するためには目的の設定が必要


医療、教育、福祉の役割は子どもたちが自分が主人公の人生を歩めるようにすることです。
そのための基本的な条件をととのえ応援すること、さまたげている症状などを治療したり外在化して扱えるようにして、強みにあふれた本来の自分をでてくるようにすること、そしてさまざまな選択肢を提示して、本人の選択と試行錯誤を応援することだと思っています。

この領域を考える上で「人生ドラクエ化マニュアル」という一般書は参考になりました。
ルータイスなどのコーチングの本などとも言っていることはほぼ一緒ですがドラクエに例えることでとてもすっと入ってきます。


この本ではゲームとは「目的、ルール、敵」があるものと定義します、
その上で人生をゲーム化するには目的を自分で見つけなければいけないといいます。
でも目的は何度変えてもいい。
目的をきめると敵(課題)は現れてくる。
敵が強すぎる場合は弱い敵から倒していけばいい。
でも人生のゲームは突然死ぬこともあり、復活はありません。
だから好きでも得意でもないことをやっている暇はないのです。

セルフコントロールとネットリテラシーを教える


子どもが自分の人生を歩めるようになるために、お酒やタバコ、ギャンブルもそうですが、プロセスにしろ薬物にしろ依存性が強いものに関しては、暴露開始年齢は遅いほうがよいことは間違いないようです。
刺激が強く依存性が強すぎるものは発達途上の脳には危険性が大きいからです。

しかし、とはいえネットのリテラシー、ゲームを自己統制しながら楽しむスキルは身につけなければいけません。また、それらを親子でやれる時期というのも限られています。

上手く付き合えばゲームは楽しい趣味になりえます。インターネットも個人レベルでだれでも時空を超えて世界とつながれる可能性を大きく広げてくれる有効なツールになります。

だから、早期から親子が子どもの言い分を十分に聞いて共感(ネットやゲームのことなどについても)すること、子どもが親にきちんと話してくれる関係であることが大切です。
その上で親から子への一方通行でない双方向の対話を継続する中で、楽しく出来る活動の選択肢を提案し人生の目的を見つけるお手伝いをすること、そのために自己統制や、ネットのリテラシーを学ぶこと、さらには特にルールを守ることで守られることを学ぶということが大事なのだと思います。

足立先生のおっしゃるように依存症の知識というのも学校ですすめていくことも必要でしょう。

学校教育や家庭教育なども含め大人もなかなかそのあたりのノウハウには乏しく、忙しくその手間をかけられないというのが問題です。
GIGAスクール構想で子どもたちにパソコンかタブレットと回線がやっと行き渡った段階です・・。

ネットゲーム依存にしないために

依存症は主体性を究極まで奪われている状態なので、ネットゲーム依存の状態から回復するためには主体性をいかに取り戻すかということなんだと思います。

これは診察室や入院病棟だけではなかなか難しい。

人生の目的を見つけるためには、様々な種類の体験や、いろんな生き方をしている人との対話が重要です。それは家庭と学校だけでは足りません。社会全体で若者たちにいろんな価値観に触れるチャンス、試行錯誤するチャンスを社会として提供するということを考えていかなければならないのだとおもいます。

このへんの話題について対話をしたいので、オンラインで「ネットとゲームとの付き合い方について語る会」やりたいとおもっています。

3月21日(月)(春分の日)13:30〜15:00にZOOMでの開催を予定しています。


大人、子ども、当事者、家族、支援者どんな立場の方でもお集まりください。
体験や治療経験を話してくれる方もお待ちしております。

希望者はこちらのフォームからお申し込みください。
前日までに入り口をご案内します。

情報)
フリーランス精神科医の三木先生のネット・ゲーム依存の講演動画がありました。関先生、吉川先生もそうですが自分の診療とスタンスが近いです。ぜひ御覧ください。まず子どもたちが何に興味をもっていて、なぜゲームにハマるのか知ろう。その上で実生活の充実を!

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